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季節は五月。
挫折して空を仰ぐ弟。自分の世界を今まさに押し広げている弟。
まるで河一本隔てた遠くから見つめるような自分。
自分のそばまで這い上がるのを見守らずにはいられないのは、兄としてだろうか。
今思えば昨日今日始まったことじゃない。ハナミズキのつぼみに手を伸ばす小さな姿に、手を貸してやっていた。
あの頃からあいつはたよりない。儚い薄紅色に見えるんだ。
果てしなく広がる夢への道、ちゃんと歩けるか不安でしかたがない。
誰でもいい。誰かあいつとずっと一緒に歩いてくれる人はいないのか?…俺じゃ無理なんだ。
夏がやってきて、心が焼け付く。
想う心と突き放す心に挟まれて余裕が無くなっていく。
一緒に渡るということは、一隻の船を奪い合うことと同じなんだ。
船が沈むと分かったら、俺は全て譲ってしまったりするんだろうか?
少なくとも、あいつのゆく道を俺が邪魔することは
俺が許さないんだろうな。自分が分からなくて心が重い。
気持ちは全部は言葉にしない。全部は伝えない。
そうすれば丸く収まって、あいつとの間にできたさざなみもいつか止まるはず。
こんな兄貴をいつまでも頼っちゃだめだろう。だから、もっと他の人を見つめてみろよ。
あの頃だって蝶々を必死で追いかけて、楽しそうに俺からどんどん離れていったじゃないか。
俺なんか見ていなくても、あいつは自分の帆を掲げて進めるんだって俺は気付いてた。
じゃあ提案しよう。母の日にミズキの葉を贈ってくれれば、同じ親から生まれた兄弟であることを忘れないですむだろ。
その程度でいいんだ。兄弟なんて。
産んでくれた母さんに感謝する、そういうことにしておこう。
俺の気持ちなんて知らなくていい。蝶々が行っちゃうだろ、待たなくていい。
多分、俺はこの先いつまでたってもあいつが薄紅色に見えるんだろう。
いつまでもずっとあいつの後押しをしたくなってしまうんだろう。
その度に自分の気持ちをおざなりにするんだろう。
でも、それで波が収まるんならそれでいいと思ってしまうんだろう。
だから、早く俺から離れていけ。いっそ誰かのものになってしまえばいい。
そうすれば少しは気が軽くなるよ。
あいつとその人がいつまでも幸せならば。
ひととようにも小湊にも申し訳なくなってきた。でもせっかくここまでタイプしたから(…。)
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